昭和19年創業、70年以上日本橋で愛され続けるこの老舗中華料理店の味には、一度食べると忘れられない個性がある。
決して高級中華ではないが、確かな満足感を求めて、ランチタイムには周辺のオフィスワーカーが毎日行列を作る。時間に余裕のある人は11時半くらいまでに店に入ると、比較的スムーズに座れるだろう。12時を過ぎると店内はあっという間に満席になる。ちなみにランチの時間は4名以下で入ると相席になる。
店の外に出ているメニューを眺め、入り口のガラス扉を開けようとすると、ガラスの向こうから店員さんが笑顔で扉を開き迎えてくれて嬉しくなる。私が特別常連で覚えられているという訳ではない。分け隔てない親しみのこもったこの接客が長年この地で愛され続ける理由の一つでもあるのだろう。
季節は冬。定番の担々麺か冬季限定の牡蠣そばにするか迷ったが、久しぶりの訪問のため今回は担々麺セットを頼むことにした。連れが牡蠣そばを頼むというので、少しシェアすることに。ランチは名物のシュウマイ付きセットが充実。
注文するとすぐにセットのシュウマイが出てくる。時間のないランチにありがたいスピード感。
1口では食べられないほどの肉の塊。歯ごたえが違う2か所の部位の豚肉を使い、つなぎを限界まで減らして作るというポークシュウマイ。生姜が効いていてさっぱり、肉の臭みは全くない。しっかりとした噛みごたえと噛むほどに溢れる旨みが空腹に染みる。
シュウマイを堪能していると、お待ちかねの担々麺が到着。担々麺好きには絶対に食べてほしい小洞天の個性的な担々麺。
なんと、挽肉ではなくゴロっとした角煮が乗っていて、挽肉の味がスープに混ざらない。だから一般的な担々麺よりも胡麻や香辛料の香りがガツンとストレートに伝わって来るのだ。
一口食べると、はじめに強い胡麻の香り、その後に唐辛子の辛味、飲み込んだ後に舌に残る痺れ。絶妙な時間差で様々な風味を楽しませてくれる究極の担々麺だ。
箸で持つと崩れそうな角煮は、中華スパイスが香る甘めの味付けで、少し辛いスープと絶妙なコントラスト。生の白髪ねぎとカイワレ大根の薬味も本当にバランスが良い。
味わってゆっくり食べたいのに、次の一口が待ちきれず、いつもあっという間に食べ終わってしまう。
連れに少しシェアしてもらった冬季限定の牡蠣そばもご紹介。醤油ベースのスープで、薄く衣をまとった牡蠣とチンゲン菜のあんかけが乗っている。大きめの牡蠣がごろごろと5つも入っていてお得感がある。
1口目の感想は、実に香ばしい。汁麺を食べて香ばしいという感想も変だが、本当に香ばしいのだ。チンゲン菜の歯ごたえを楽しみつつ、ふっくらと衣をまとった牡蠣を噛みしめ、牡蠣の香りを口内に満たしながら、ツルツルと麺を啜る。冬を感じる一杯だ。季節が変わる前にまた食べに来よう。
入った時には落ち着いていた店内も、食べ終わるころには満席で活気づいていた。外にも少し列が出来ている様子。
コートを着て外に出るとポカポカと体の内側から温かみを感じて、冷えた気温が心地よい。肌寒い季節に最適なランチ。
本日のお会計
担々麺セット(シュウマイ2個付)1,230円/冬季限定 牡蠣そば 1,200円
アクセス
日本橋駅(東西線、銀座線、都営浅草線)徒歩5分
東京駅(JR線)徒歩7分